虫歯治療では、虫歯部分を削った後に詰め物や被せ物をしますが、「どの素材を選べばいいのだろう」迷っている方も多いのではないでしょうか。
この記事では虫歯治療の詰め物に使われる素材を比較し、それぞれのメリットとデメリットを紹介します。ご自身に合った治療方法を選ぶために、参考にしてください。
海外では使用禁止されている「銀歯」の実態
虫歯治療と聞いて「銀歯」を思い浮かべる方も多いはずです。銀歯は金銀パラジウム合金という金属が使われています。金が12%、パラジウムが20%、そのほか銀や銅が含まれています。型取りをして作成した銀歯をセメントで歯に接着して使用します。
日本では銀歯が使われていますが、歯科医療先進国のドイツでは銀歯の使用を全面禁止、スウェーデンでは小児や妊婦の使用禁止が定められています。
また、日本では未だに銀歯による治療が行われているものの、最近ではセラミックなどの素材を選択される患者さまも増えています。
銀歯のデメリット
では、なぜ海外では銀歯が使用されていないのか、銀歯のデメリットを4つ紹介します。
①銀歯の下の歯が虫歯になりやすい
1つ目は、銀歯を被せた歯が虫歯になりやすいことです。銀歯は金属なので噛む力で少しずつ変形してしまいます。変形してできた隙間に歯垢がたまりやすくなりますが、銀歯の下で虫歯になっているかどうかは確認しにくく、悪化するまで虫歯を放置してしまいがちです。このように虫歯治療をした箇所が再度虫歯になってしまうことを「2次カリエス」と呼びます。
②見た目が目立つ
2つ目は、銀歯の見た目が目立つことです。白い歯の中に銀色が混ざると、一目で分かり虫歯があったことが明らかです。
さらに、銀歯から溶け出した金属イオンが歯茎に付着して黒ずんで見える「メタルタトゥー」という状態になることもあります。銀歯によってメタルタトゥーができてしまうと、薬剤やレーザーによって歯茎の表面を剥がすしか消す方法がありません。また、一度消しても口の中に金属がある限り、メタルタトゥーは再発する恐れがあります。
③変形しやすく3~5年で交換が必要
3つ目は、銀歯は変形しやすく3~5年で交換が必要なことです。銀歯は割れにくい性質がありますが、その分噛むことによって変形していきます。その結果、新しく銀歯を装着した時から変形してしまい、歯との間に隙間ができやすくなります。また、変形した銀歯を長期間使用することで、歯の噛み合わせにも影響が出ることもあります。銀歯は3~5年で交換することが推奨されています。
一方で、セラミックの被せ物は寿命が10年~15年程度なので、長持ちする治療をご希望の方にはセラミックがオススメです。
関連記事:セラミックの歯の寿命は?
④金属アレルギーの原因となる可能性がある
4つ目は、銀歯が金属アレルギーを発症する原因となる可能性があることです。銀歯は常に唾液にさらされていて、銀歯から金属イオンが排出されます。金属イオンが含まれた唾液を飲み込むことで、体内に蓄積され金属アレルギーを発症する可能性があります。今まで症状がなかった人でも、アレルギーは急に発症するため、注意してください。
銀歯のメリット
一方、銀歯を使うメリットもあります。
①保険診療対象なので安い
1つ目は、保険診療対象なので安いことです。日本では銀歯が保険診療の対象なので、比較的安く銀歯を入れることができます。3割負担であれば1本の歯に対する銀歯の治療は数千円で済みます。
②割れにくく丈夫
2つ目は、割れにくく丈夫であることです。銀歯は薄くても割れたり欠けたりすることがほとんどありません。銀歯が壊れる可能性が低いため、安心して食事ができます。ただし、割れにくいものの変形はしやすいため、定期的なメンテナンスと3~5年に一度の交換が必要になります。
銀歯の代わりとして注目されているセラミックとは?
近年は銀歯のデメリットが問題視され、他の素材も使われるようになってきました。特に銀歯の代わりとして注目されているのは、セラミックです。セラミックとは、洗面所や食器などに使われている素材です。
セラミックのメリット
セラミックを虫歯治療に使うメリットを紹介します。
①自然の歯に近い色味で目立ちにくい
1つ目は、自然の歯に近い色味で目立ちにくいことです。セラミックは透明の素材で、ご自身の歯の色味に近い色を数種類から選ぶことが可能です。さらに、セラミックは変色してしまった歯の見た目をよくするためにも使われています。
③ 汚れが付きにくい
2つ目は、汚れが付きにくいことです。セラミックは陶材という素材でできていて、汚れが付きにくいという特徴があります。ワインやコーヒーなどの着色汚れが付きにくく、歯を白く保ちやすいです。歯垢などの汚れも取りやすく、歯の健康を保ちやすいといえます。
④ 経年劣化しにくい
3つ目は、経年劣化しにくく長い間使用できることです。セラミックは毎日歯磨きをするなどのケアを行えば、平均で10~15年は持つとされています。口の中は常に唾液があり雑菌も繁殖していますが、セラミックはほとんど劣化することはありません。ただし、定期的に歯医者で歯の状態をチェックしてもらい、異常がないかは確認しておくことをおすすめします。
セラミックのデメリット
一方で、セラミックを使うデメリットも紹介します。
①費用が高い
1つ目は、費用が高いことです。セラミックは保険適用外で自費診療となるため、銀歯と比べると高額になります。しかし、見た目がきれいであることや長期的に使用ができて交換の回数が少なくて済むことを踏まえると、最終的にかかる治療費を抑えられるという考え方もあります。
②強い衝撃が加わると割れることがある
2つ目は、強い衝撃が加わると割れることがあることです。セラミックは強度があり硬い素材であるため、強い衝撃を与えると割れやすいという性質があります。歯ぎしりによっても割れることがあるので、セラミックを使うかどうかは歯医者で相談してください。夜間の歯ぎしり対策としてマウスピースを装着すれば、セラミックや歯のすり減りを軽減することは可能です。
また、セラミックの中にもいくつか種類があり、「ジルコニアセラミック」と呼ばれる素材は丈夫で固くて割れにくいです。強い衝撃の加わりやすい奥歯に使用する場合などはジルコニアセラミックを選択することで解決できます。
関連記事:ジルコニアセラミックのメリット・デメリット
③歯を削る量が多い
3つ目は、装着する時に歯を削る量が多いことです。セラミックの場合はある程度の厚みがないと強度が保てないことから、歯を多めに削る必要があります。
セラミックの種類
セラミックには数種類あり、それぞれ特徴があります。
●オールセラミック:100%セラミックからできていて、歯の自然な白さを表現できます。
●ジルコニアセラミック:セラミックと人工ダイヤモンドの混合で、強度が高いので噛む力が強い奥歯に向いています。
●ハイブリッドセラミック:セラミックとレジンの混合で、厚みが少なくても強度を保てます。他のセラミックよりも価格が安いですが、歯垢が付きやすいです。
●メタルボンド:内側のフレームに金属を使い、表面はセラミックで覆います。金属アレルギーを発症する可能性がありますが、耐久性が高いです。
また、セラミックの種類によって歯科技工士が作る場合とセラミックの塊をコンピューターが削りだす場合(セレッククラウン)があります。セレッククラウンはセラミック治療の中では比較的安価で作れますが、細かい色合わせや形までは調整が難しいです。見た目が気になる前歯ではなく、あまり目立たない奥歯などに使われることが多いです。
銀歯とセラミックを比較
銀歯とセラミックを比較すると、次のようになります。
銀歯 | セラミック | |
見た目 | 目立つ | 目立たない |
耐久性 | 3~5年 | 10~20年 |
金属アレルギーのリスク | あり | なし |
費用 | 保険適用 | 自費診療 |
治療後の虫歯 | なりやすい | なりにくい |
銀歯からセラミックに交換できる?
セラミックのほうが目立ちにくく体にも良いということで、既にある銀歯をセラミックに交換したいと考える方も多いでしょう。銀歯を取り外してセラミックに交換することは多くの場合で可能ですが、保険適用外なので自費診療となります。
銀歯からセラミックに交換する方法を紹介します。
【1回目】
1. 銀歯を外します。(神経が残っている場合は麻酔をします。)
2. 歯や神経の状態を確認し、必要があれば治療を行います。
3. 型取りをします。
4. セラミックができるまで、仮ふたをしておきます。
【2回目】
1. 仮ふたを外します。
2. セラミックを仮ではめこんで型の最終確認をします。
3. セメントでセラミックを接着して完成です。
銀歯からセラミックに交換する時の注意点は2つです。1つ目は、銀歯を外した時に虫歯ができていて治療が必要になることがあることです。2つ目は、セラミックに交換する時に歯を削ることもあり、しみる可能性があることです。通常は2~3カ月でしみなくなりますが、しみる状態が続くようであれば歯医者に相談してください。
銀歯に不安ならセラミック治療がオススメ
銀歯には、虫歯の再発や金属アレルギーのリスクなどデメリットがあることを紹介しました。
セラミックは自費診療となるため銀歯よりは高価ですが、見た目が良く経年劣化しにくいため、長期的に考えればコストパフォーマンスが良いという考え方もございます。
これから虫歯の治療をする時や今ある銀歯をセラミックに交換したい時は、ぜひしろくま歯科医院までお問い合わせください。患者様のご要望・歯の状態・予算に合わせた方法を提案させていただきます。