虫歯や歯周病、もしくは事故など予期せぬ原因により、歯を失ってしまうケースがあります。中には、「1本無くなるくらいならそんなに影響がないのでは」と、そのまま放置してしまう人もいます。
しかし、歯がないまま放置するのは見た目の問題にとどまらず、様々な側面で悪影響を及ぼします。
そこでこの記事では、歯科治療の専門家が、歯がないことによる身体への影響、それらを克服するための治療法(インプラント、ブリッジ、入れ歯など)についてわかりやすく説明します。
「歯がない状態が不安」「失った歯を取り戻す治療法が知りたい」という人はぜひ参考にご覧ください。
歯がないことで起こる体への影響
実は、仮に1本だけであっても歯が無くなるとさまざまな影響が現れます。ここでは、歯がないことで現れる体への影響について解説します。
1.歯がないと硬いものが食べられない
健康な歯は、食べ物を効率的に噛み砕くために不可欠です。歯を失うと、食生活において硬い食べ物を噛む能力に大きな影響を与えます。
硬い食べ物を噛む際には、歯は大きな圧力に耐えながら食べ物を細かく砕く役割を果たします。特に、野菜やお肉などの硬い食べ物を適切に噛むためには歯の強さと耐久性が必要です。
歯が足りない場合には硬い食べ物を噛むことが難しく感じるようになり、噛む力が不足するために食べ物が十分に砕かれず、大きな塊のまま摂取されることになります。
食べ物の味わいや食感を十分に楽しむことができなくなるだけでなく、食事自体が苦痛になるという問題も生じます。
また、硬い食べ物を適切に噛めないことが食事の選択肢を狭め、栄養バランスを崩す原因にもなり得ます。硬い野菜やお肉を避けて、食べやすい炭水化物中心の生活になってしまい、栄養分が偏ってしまうのです。
歯がないことによる硬いものが食べられない状態は、食生活の満足度の低下を引き起こすだけでなく、全体的な健康状態にも徐々に影響を及ぼしていくことが考えられます。
2.噛む力が低下するので消化不良を起こす
歯がない、または歯の状態が極端に悪いと食べ物を十分に噛むことが難しくなると解説しました。歯がないと噛む動作が困難になるのはもちろん、消化不良の問題を引き起こす原因となり得ます。
食べ物を噛む過程は、消化の第一段階です。この段階で食べ物を細かく砕くことで、食物の表面積が増え、消化酵素が効率良く作用することができます。
しかし、噛む力が低下していると、食べ物は十分に砕かれず、大きな塊のまま胃に達します。その結果、消化不良が生じ、胃の不快感や腹痛、膨満感などの症状を引き起こし栄養素の吸収が不十分になってしまいます。
また、不十分に消化された食物が腸に長時間留まることで、ガスの発生や便秘などの問題が生じる可能性もあります。
長期的に見ると、噛む力が弱まることによる消化不良は、全身の健康状態の低下を招くことも考えられます。
3.顔のたるみや変形など、老け顔になる
歯がない状態は噛む機能の低下に留まらず、顔貌にも大きな影響を及ぼします。具体的には、顔のたるみや変形といった顔貌の変化です。
歯がないことで顎の骨は徐々に吸収され縮小する傾向にあります。これにより、顔の輪郭の変化を引き起こす可能性があります。
さらに、顎の骨が縮小すると、顔の筋肉にも影響が及びます。顔の筋肉が適切に機能しなくなることで、顔のたるみやしわが発生し、顔全体の印象が老けたように感じるのです。
歯がないことによる顔の変化は、単に見た目の問題だけではなく、自己意識や自信にも現れます。自分の見た目に自信が持てなくなると、社会的な活動や対人関係にも悪影響を及ぼす可能性があります。
4.噛み合う歯が伸びて抜ける
歯が抜けたまま放置すると、噛み合う歯が伸びて抜けてしまうことがあります。また、失った歯の両サイドの歯が倒れて噛み合わせが悪くなり、ドミノ倒しの形になる恐れもあります。
このように失った歯を放置すると、様々なリスクを伴います。そのリスクを抑えるために、適切な治療を行っていく必要があります。
歯がない場合の4つの治療法
現代では、ニーズに合わせて多種多様な治療法ございます。ここからは、主な治療法として代表的なものを4つ紹介していきます。
治療方法 | イメージ画像 | 特徴 |
ブリッジ | 失われた歯の両側にある健康な歯を支点として利用し、その間に人工の歯を固定する方法。 | |
保険適用の入れ歯 | 保険適用内で使用できる基本的な材料を用いた入れ歯。金属のバネが目立つ・噛みにくい・外れやすい等の問題がある。 | |
インプラント | 顎の骨にチタン製の人工歯根を埋め込み、その上に人工の歯を装着する方法。外科的手術が必要になる点、自費治療の中でも最も費用が高額になる点を留意する必要がある。 | |
自費の入れ歯 | 個々の口腔状況やニーズに合わせて精密に作製できる。装着時の違和感が少なく、快適な着け心地を実現できる。中でもノンクラスプデンチャーは金属のバネを使わないので審美性にも優れている。 |
1.ブリッジ
ブリッジは、一つ以上の欠けた歯を補う歯科治療法です。
失われた歯の両側にある健康な歯を支点として利用し、その間に人工の歯を固定して自然な見た目と機能を回復させます。支点となる歯には特別なカバー(冠)がかぶせられ、その上に人工の歯が取り付けられます。
ブリッジは見た目の違和感を抑えつつ、自然に噛む力を取り戻すことを目的とした治療法です。治療期間も比較的早く完了させることができるため、歯科医に通う負担も軽減できます。
しかし、ブリッジを行う際には隣接する健康な歯を削る必要がある点を留意しておかねばなりません。ただし、ご く一般的な第一選択になるほどの教科書的な治療であり、歯の寿命が短くなるまでのデメリットはありません。
2.保険適用の入れ歯
保険適用の入れ歯は、「なるべく治療の費用を抑えながら無くした歯を取り戻したい」という人がまず検討する方法です。
保険適用の入れ歯は、保険適用内で使用できる基本的な材料と設計を使用しています。
使用感に関しては、取り外しが可能で清掃やメンテナンスが比較的簡単であるため、日々のケアにおいても利便性が高いです。また、一本の歯を補いたい場合はもちろん、複数の欠損にも対応できる柔軟性も特徴です。
ただし、保険適用の入れ歯はフィット感や快適さの面では、個々の口内状況に完全に合わせることが難しいので、場合によっては違和感・不快感・痛み・外れやすいなどの問題があります。また、金属のバネが見えるので、見た目を気にされる方にはオススメできません。
3.インプラント
「以前の歯と同様の機能・見た目を取り戻したい」という人には、インプラント治療(自由診療)がオススメです。
インプラントは、顎の骨にチタン製の人工歯根を埋め込み、その上に人工の歯を装着することで、自然な見た目と機能を回復します。
インプラントは固定式ですので、固いものもしっかり食べることができます。また、会話中に外れてしまうのでは、という心配も不要です。
ただし、インプラントは自費治療の中でも1番費用が高額です。また、高血圧等の全身疾患等の方は要注意で、オペ後数年後に全身疾患になる場合のリスクも高いです。インプラント治療を行ったものの、最終的には入れ歯になる方も多いです。また、外科的手術が必要になる点を留意しておく必要があります。
関連記事:インプラントのメリット・デメリットとは?
4.自費の入れ歯
自費の入れ歯は、高品質な素材と精密な設計で作られており、「噛む」「喋る」など日常生活を快適に過ごすことができます。
自費の入れ歯にも種類がいくつかありますが、中でも「ノンクラスプデンチャー(金具を使わない入れ歯)」は、見た目が美しく笑顔がより自然に映ります。また、精密なフィット感により、食事や会話にストレスを感じにくいです。さらに、耐久性が高く長期間にわたって使用できるため、長期的に見ると経済的にも優れています。
とはいえ、保険適用の入れ歯と比べると、自費の入れ歯は初期費用が高いのは事実。しかし、日常生活での快適さを求める人や、自然な見た目を重視する人には、自費の入れ歯がおすすめです。長期的な使用を考えた場合、初期投資を上回る価値となるはずです。
自費の入れ歯がおすすめの理由
自費で作る入れ歯は多くの利点があります。ここでは、自費の入れ歯を選ぶことのメリットを、具体的に解説します。
・個々のニーズに合わせてカスタマイズできる
自費の入れ歯は、個人の口の形やニーズに合わせて精密に作られます。これにより、装着時の違和感が少なく、快適な着け心地を実現します。
・自然な見た目で機能性も高い
高品質な材料と精巧な作りにより、自然な見た目と機能を実現します。外見に自信を持つことができ、社交的なシーンでも安心して笑顔を見せることができます。
・しっかり噛める
自費の入れ歯では、時間をかけてお口にフィットする入れ歯を作成していくため、しっかり噛むことができます。
このように自費の入れ歯は、機能面・審美面で優れているだけでなく、インプラントと比較すると費用が抑えられ、なおかつ手術が不要です。この点から、最近では自費の入れ歯をご選択される患者様も増えています。
ノンクラスプデンチャーについて
自費入れ歯の中でもオススメなのが、ノンクラスプデンチャーです。ノンクラスプデンチャーは、従来の金属のバネ(クラスプ)を使用しない入れ歯の一種で、以下のようなメリットがあります。
・見た目が自然で美しい
金属のバネを使わないため、笑った時や話している時に金属が見える心配がありません。
・快適な装着感
ノンクラスプデンチャーは、柔軟性のある材料で作られており、口内での違和感が少なく、着け心地が良くて快適です。
・健康な歯への負担が少ない
金属のバネがないため、隣接する健康な歯への負担が少なく、周囲の歯へ悪影響を与える心配がありません。
このように、ノンクラスプデンチャーは「機能性」と「審美性」を兼ね備えた入れ歯であり、「保険の入れ歯では満足できないけど、インプラントは手術が怖い」といったお悩みをお持ちの方にオススメです。
なお、当院ではノンクラスプデンチャーの種類の中でも人気の高いバルプラスト利用義歯を使用しております。
バルプラストは、金属のバネを使用しない部分入れ歯(ノンクラスプ義歯)です。1956年にアメリカで開発され、日本では2008年4月9日に薬事認証されています。
バルプラストは、スーパーポリアミドという特殊なプラスチック(ナイロン系の素材)でできており、薄くて軽く、弾力があって痛みが出にくく耐久性に優れています。
金属のバネがなく、もの詰まりも少なく、歯に負担もかかりません。見た目も綺麗なので他人に入れ歯と気付かれません。ノンクラスプデンチャー寿命が2~3年とネットの記事にたまにありますが、当院のバルプラスト利用義歯の方は10年以上お使いの方が多くいらっしゃいます。
関連記事:ノンクラスプデンチャーの特長と費用
歯を失ってしまった方は、お気軽にご相談ください
今回は、何らかの原因で歯を失ってしまった人に向け、放置しておくことで起こる影響と治療法について解説しました。「歯がない」状態は身体的にも心理的にも与える影響がとても大きいため、必ず治療をするべきです。
現在の歯科医療では、インプラントや自費の入れ歯など、多様な治療の選択肢が提供されています。これだけ沢山の治療法があると「どれを選べば良いか分からない」と悩んでしまう方も多いかと思います。
しろくま歯科医院では、「入れ歯」「インプラント」「ブリッジ」の各治療に対応しております。患者さまのお口の状況・ご要望・ご予算などに応じて、適切な治療をご提案しますので、お気軽にご予約いただければ幸いです。